「負けない理由」
冬の寒空の下、夕日が沈みかけている頃、テニスコートの近く。
少年が1人、少女が1人向き合い立っていた。
その少女は青学1の美少女・だった。
しかも男子テニス部の天才・不二周助の彼女だ。
少年は無謀にも、玉砕覚悟で告白をしようとしているのだ。
「あ、あの、さん!」
「はい。」
「ぼ・・僕、あの・・・・・」
少年は青学1の美少女を前に赤面し、なかなか告白できずにいた。
は告白なんて日常茶飯事で、不二以外の男に全く興味がなかった為、
内心『早くしてよ・・寒いんだから。』と少々苛立っていた。
そしてついに少年は勇気を出して言った。
「僕、さんのこと・・ずっと好きでしたっ!!」
「残念、は僕のだよvv」
「え?」と少年とは声をハモらせた。
理由は1つ。
不二が急に現れ、の代わりに返事をしたからだ。
「周助、部活終わったの?」
「うん、も帰るところみたいだし、一緒に帰ろう。」
不二は何気なくを抱き寄せた。
が、その行為は明らかに少年を意識したものだった。
そして最後のとどめとして少年に、恐ろしいことこの上ない笑みを向け、
少年は固まってしまった。
は不二から離れ、苦笑いしつつ言った。
「そういう事だから、違う人見つけてね。」
「す、すみませんでしたぁ───────っ!!!」
少年はそう叫びながら走り去った。
はふぅっとため息をつくと、不二の方に向き直った。
少し怒っている様子。
「周助、なんであぁゆうことするかなぁ。」
「あぁゆうことした方が効果的だと思うよ?」
不二はそう言うと、クスッと笑った。
・・・鬼っ!
とは心で思った。
「まぁいいや。帰ろうよ。寒い・・」
がそう言うと、不二はの手をとった。
「本当だ、の手すごく冷たい。
すぐ帰る用意してくるから、もぅちょっと待ってて。」
の手に息を吹きかけて、少し暖めてから
不二はテニスコートへ戻っていった。
すると、不二と入れ違いに菊丸がコートから出てきた。
「あ、ちゃん!」
菊丸はに気付いて手を振り、小走りで近づいてきた。
「英二、お疲れさまー☆」
は菊丸に優しく微笑みかけた。
菊丸もにぃーっと笑った。
「そうそう、この前借りたCDかなり気に入っちゃった♪」
「やっぱり!なら気に入ると思ったんだ。」
菊丸は急に大人びた顔を見せた。
は少し驚いたらしく、首に手を当てた。
は動揺すると、首に手を当てる癖があるからだ。
「なんか大人っぽくなったね、英二。」
「んー、まだ全然だよ。
ライバルはもっと大人っぽいし。」
そう言って、菊丸は苦笑いした。
「ライバル・・?って誰?何のライバル?」
「恋のライバルだよ。誰かは・・そのうち解るかな。」
菊丸は首をかしげているの頭を優しく撫でた。
するとは菊丸の肩越しに、テニスコートから出てくる不二を見つけた。
「あ、周助。」
その言葉に菊丸はビクッと反応し、を撫でていた手を下におろした。
「んじゃ、俺もう行くね。バイバイ☆」
「え、うん。バイバイ!」
手を振り走り去った菊丸に、も手を振り見送った。
「、待たせてゴメン。」
不二がの肩をポンと叩き、振り返る。
その時、は菊丸の時とはまるで違う、優しい笑顔を不二に向けた。
「ううん、平気だよ♪英二と話してたし!」
「そぅ。英二と・・何話してたの?」
何気なく探りを入れる不二。
それを少しも疑うことなく、素直に全て話し始めた。
楽しそうに話すを見て、不二は少し淋しそうな顔をした。
「それでねっ・・・・・・周助?話、つまんなかった?」
不二の些細な表情を見逃さなかったが、しゅんとしながら言った。
不二は首を横に振り、にこっと笑うとの額にキスをした。
「ごめん、ちょっと嫉妬しちゃっただけだよ。
でも大丈夫。負ける気はこれっぽちもないからね。」
笑顔で話す不二。
鈍感なは状況が飲み込めていない様子。
「負ける気はしないって、何の試合に?応援しに行くよ?」
大真面目に言うが可愛くて、不二は思わずははっと笑った。
「が応援してくれるなら、僕の勝ちは決まったかな。」
「だから何のっ?!」
「恋の、だよ。」
負けるわけにはいかない。
誰かに君を渡すなんて事、絶対出来ない。
だって、僕には君が必要だから。
じゃないと駄目だから。
誰にも渡さない。
例え相手が・・菊丸だとしても。
負けない。
の為に。
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→黒蝶
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