「誰よりも。 -2-」
ホークアイを探し回っている───────
ホークアイは大抵は執務室に居るのだが、
そこにはロイも居る。
もしかしたら今は違う所にいるかもしれないと、
他の所を色々探してみたが、何処にも居ない。
残った場所はただ1つ。
やはりロイの居る執務室だった。
取り敢えず執務室の前まで来た。
腕を組み考え込んでいたが、意を決してノックを2回した。
「誰だ。」
すぐに返事が返ってくる。
勿論ロイの声だ。
何故かすごく緊張してしまう。
1回深呼吸をしてから答えた。
「・少佐であります。」
「っ・・・・。入りたまえ。」
はドアノブに手をかけ、ゆっくりとドアを開けた。
中に入り静かにドアを閉め、軍人らしい敬礼をした。
やはり中にはホークアイも居た。
「あの・・・」
「用件を聞く前に2人で話がしたい。
ホークアイ中尉、悪いが席を外してもらえるかな。」
「はい。」
勝手に話が進み、ホークアイは出ていってしまった。
固まるに関わらず、ロイは続ける。
「取り敢えずこっちへ来て座ってくれないか。
調子が狂う・・。」
おずおずとソファーに座る。
ロイも席を離れ、の向かいのソファーに座った。
「聞かせてくれないか。あの言葉の理由。」
「・・・・・・・・・・・・。言葉のまま、少し距離をおきたいだけ。」
「だからなんでっ」
眉間にしわを寄せ、少し大きくなったロイの声にはビクッとする。
それにロイも気付き、目頭を抑えるようにしてソファーに深く座りなおす。
そんなロイを見たからか、は縮こまり俯いている。
「、顔を上げて。」
「・・・・・・・・・・・・。」
暫くの沈黙。
ロイは小さく溜息を吐き、気付く。
は静かに泣いている事に。
「っ!?・・・泣いて、いるのか?」
「・・・・っ」
ロイの問い掛けには首を横に振るが、明らかに泣いている。
膝の上においた小さな手に数滴、涙が落ちる。
「・・・・何故話してくれないんだ?
何を1人で溜め込んでいるんだ?
私は・・・・・のコトを何も、知らない・・・・・・・・。」
ロイが悲しそうな顔で言う。
その声は微かに震えていた。
「・・・・はハボック少尉と、随分仲が良いな。」
「っそれは」
「幼馴染なんだろ?知ってるよ。
でもそれはから聞いたんじゃない。
実家が隣どうしなんだろ。
それも・・・・人から聞いた。」
「・・・・・・・・。」
手を組み、額を着けるようにしてゆっくりと瞳を閉じるロイ。
は俯いたまま。
「どんな、些細な事でもいいんだ。
今朝何を食べたとか、好きな歌とか。
なんでもいいんだ。」
他人が聞いたら呆れるくらいの話でもいい。
「話して欲しいんだ、のこと。
教えて欲しいんだ。」
本当になんでもいいんだ。
「のコト、誰よりも知っていたいんだ。」
1番良く知っている存在に、なりたいんだ。
するとがゆっくりと顔を上げる。
泣き止んでいるものの、目が真っ赤だ。
「私は話したかったよ、いろんなコト。
話そうとしてたよ。」
酷く震えていて、また泣き出しそうなの声。
ロイは一言も聞き逃さないように耳をかたむける。
「だけどっ・・・そんな時間、ロイには無かったじゃない。
ただでさえ、”大佐”の仕事が忙しくて・・
たまに暇が出来て、私と会えばするコトは決まってて。
話なんてしないじゃない。」
の声がロイの頭に響く。
確かに最近は忙しく、と会ってするコトは決まっていた。
でもそれは、普段の疲れを癒したくて、
自然とを求めていたからだ。
「私はっ・・・私は、そんな関係にウンザリしただけ。」
は瞳に涙をいっぱいためて言った。
「ロイに、本当に愛されているのか・・不安になっただけ・・・。」
「・・・っ!」
ロイはの言葉を聞いてすぐ、を力強く抱きしめた。
強く。
壊れてしまいそうなくらい。
「愛してるにきまってるだろっ
オレは、お前の表情一つで嬉しくなったり、悲しくなったり・・・
こんなに愛してるのにっなのにっ・・・・・・・・」
を追い詰めていたのはオレだ。
なんで気付けなかった。
こんなに愛しているのに・・・・・・・。
「ロ、イ・・・痛い。離して・・・。」
ロイは我にかえったのか、はっとしてを抱きしめていた腕の力を弱める。
でも離さない。
ロイの腕の中でが呟く。
「なんで。」
「・・・・・??」
「なんで自分のことばっか・・・。
私のコト1番知ってたいとか、こんなに愛してるのに・・とか。」
は頬を涙で濡らし、思いっきりふくれていた。
ロイは苦笑いしつつ、の涙を拭ってやった。
「はは、私は自己中かな。」
は大きく縦に頷いた後、ロイを抱き返した。
「でも、ロイの自己中な性格、嫌いじゃないよ。」
ロイは照れてか、頬を少し掻いての耳元で言う。
「私は自己中心じゃないよ。
いつだって中心だ。」
するとみるみるうちにの顔が紅くなっていく。
そんなを見てロイは微笑み、の額にキスをした。
次第にも笑顔になっていく。
とても幸せそうな笑顔に。
私は君の何を知っているだろう。
君の涙と、可愛い笑顔。
あと、ふくれた顔も。
まだ知らないことは多いけど、
これからは知っていくから。
誰よりも。
君よりも。
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すごく「書いたっ!」感のある作品(なにソレ)
大佐だから力を入れまくったし。
色んな意味で危ないケド・・・。
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→黒蝶
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