愛してはいけないと思った。
口に出してはいけないと思った。
言葉にしたら、きっと止まらないから。
「unrequited love」
いつもより少し高い気温。
いつもより少し早い脈。
いつもより少し気分がいい。
「兄さん、なんかやけに歩くの速くない?」
「そうか?そんなこと・・・」
ある。大ありだ。
だって今日は4ヶ月ぶりにに会えるんだ。
歩くのだって速くなるさ。
今日は大佐に呼ばれたから、東方司令部に行くことになった。
本当はそんな口実なくても、
に会うってだけで行きたいけど、
少し照れくさくて行けない。
だから大佐がくだらない用でもなんでもいいから、
呼んでくれるのを心待ちにしてた。
司令部に来るまでの道のりで、アルと他愛もない話を交わしたけど、
どんな話をしたかよく覚えてない。
ごめん、アル。
でも今は、1秒でも早くに会いたいんだ。
バタンッ
「ッ!!と、大佐。」
司令部に着いて真っ先に執務室に。
そこに居たのは、中尉と笑いをこらえてる大佐だけ。
あれ・・・・?
「あれ・・大佐、は?」
「やぁ、鋼の。少尉なら今給湯室へ向かったよ。」
入れ違いか。
ついてないな、早く会いたいのに。
「じゃ、大佐。オレ給湯室行ってくる。
アルはここにいていいぞ。」
「え、兄さ・・」
「待ちたまえ、鋼の。彼女は私のコーヒーを入れに給湯室に行ったのだよ。
ここで待っていればいいだろう?
それに、君を呼んだのは私なんだがな。」
くっ、こんな時に。
大佐の薄ら笑いがやけにむかつく。
どうせたいした用じゃないだろ。
「後から聞くから、アル聞いといてくれ。」
「ちょっ・・兄さんっ!」
・・・そして兄さんは勢い良く出て行ってしまった。
まったく、さんのこととなると他のコトがどうでもよくなっちゃうんだから。
「あの、大佐、中尉。身勝手な兄でスミマセン。」
「はは、君の所為ではないだろう、アレは。
気にすることはない。」
中尉も苦笑いして仕事に戻っちゃったけど、
ちょっと兄さんに甘い気がするなぁ。
ココの人たちが優しいのは確かだけど・・・
「ところでアルフォンス君。」
「あ、はい。お話があるんですよね。」
「あぁ、でもその前に君に聞きたいことがあるのだが・・・。」
「僕に?」
大佐が僕に聞きたいコト・・・・・・?
なんだろ。兄さんの今までの悪事のコトとか?(笑)
それだったら嫌だなぁ・・・・
「鋼のについてなんだが」
ビンゴだ。
兄さんのこと話して僕も共犯者でつかまったらどうしよ。
「鋼のは、のことが好きなのか?」
「え?」
兄さんが、
さんのことを、
好きか?
なんで、そんなこと大佐が。
「なんで、ですか?」
「・・・・・いや、実は・・─────」
タッタッタッタッ
だいぶ走ったな。
給湯室、こっちであってるよな。
こう無駄に広いと不安になる。
「クソッどこだよ給湯室っ!」
・・・・・・・お、コーヒーの匂い。
間違ってなかったみたいだな。
よかった・・もうすぐ会える。
しばらく直進すると、給湯室の文字が目に入り覗き込む。
「居るか?」
「え?エドワード君?!もうこっちに着いてたの?
言ってくれれば駅まで迎えにいったのに。」
あぁ。聞きたかった声だ。
見たかった顔だ。
会いたかっただ。
脈拍数と体温が一気に上がる。
自然と顔が和らいで、笑みがこぼれる。
一気に想いが溢れてくる。
この気持ちの勢いにまかせて言ってしまおうか。
『好きだ』
と、ただ一言。
「あのさ、・・・」
「そうそう、今日エドワード君たちがココに来るの、
すごく楽しみにしてたみたいだよ、ロイ。
もちろん、私もだけど。」
え・・・・?
今、誰の名前言った?
「だってね、ロイってば子どもみたいに嬉しそうに話すんだもの。」
ロイって・・・・待てよ。
大佐の名前・・なのか、やっぱ。
なんでそんなカワイイ笑顔で、上司の名前を呼び捨てにしてるんだ?
「ちょっと妬いちゃったよ、なんて。」
・・・・・・・・嘘だろ?
感情が極限まで高ぶって、
思わずの肩を掴んだ。
「、オレ実はっ・・・・」
何を言おうとしてるんだ、オレは。
少し言葉を発した後に、頭が急に冷静になる。
愛してはいけないと思った。
口に出してはいけないと思った。
言葉にしたら、きっと止まらないから。
そんなの、を困らせるだけなのは解りきってることなのに。
何を、言おうとしてるんだ。
「実は・・・・・えっと、実はオレもコーヒー飲みたいんだ。」
「・・・え?あは・・あはははは♪
なんだ、そんなコト?大真面目な顔で言うから何かと思っちゃったじゃない。
わかった、エドワード君の分もコーヒー淹れてあげる。」
「あぁ、サンキュ。」
これで、良かったんだよな。
オレの中にこの気持ちはしまっておけばいい。
言わなきゃ伝わらないから。
「・・・・・つまり、大佐とさんは恋人同士・・なんですね。」
「そういうことになるな。」
そうなんだ。
・・・兄さん、傷つくだろうな。
でも知らないままっていうのも・・・。
どうすればいいんだろう。
コンコン
「少尉です、入ります。」
・・・・・帰ってきちゃった。
やっぱ真実を正直に言うべきかな。
「アルフォンス君、久しぶり。」
「あ、こんにちわさん。
あの、兄さんは・・・?」
姿が見えない。
会えなかったのかな?
「エドワード君ならトイレに行くって。」
・・・・トイレ?
あんなに会いたがってた人に会ってすぐトイレに行くかな。
まさか、もう真実を知っちゃったとか・・・・・?
「大佐、僕ちょっと行ってきます。」
「あぁ、頼むよ。」
トイレ、トイレ、トイレ・・・・と。
ココかな。
「兄さん?居る?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・違ったかな。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・アル、か?」
「!!兄さん・・。」
この雰囲気は、もう知った後・・だよね。
兄さん、泣いてるのかな。
「アル・・オレ・・・・・・」
「兄さん。人は笑ったり、泣いたりすることでストレスを解消できるんだって。
たまには泣いてストレス解消してみたら?
・・・・ココには僕と兄さんしかいないし、ね。」
「ッアル・・・・・・・・・」
弟が、アルフォンスが居てよかった。
孤独を感じずにすんだ。
女々しく一人で泣かずにすんだ。
・・・・・・・かっこわる。
***fin***
カナタちゃんにプレゼントさせて頂いた夢でした。
初、悲恋モノですよ。
やっぱり苦手です(泣)
でもリクだったので頑張ってみました。
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→黒蝶
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