キミは真面目な人だから

犯罪なんてものとは無縁だろう。



もっとも、軍人であるから

犯罪なんてものと縁があっても困るが。




しかし私は、心のどこかで願っている。





キミが犯罪を犯すことを。














「罪人」













空はまだ明るく、もうすぐ定時になるという時。
東方司令部に1本の通報が入った。


覆面を被った男3人が、銀行強盗に入ったらしい。
3人とも銃を所持していて、客と定員を人質にしているとのことだ。

幸い、今のところ発砲はしていないようだ。


その通報を受け、慌ただしく出動する司令部の面々。
も例外ではなく、全力疾走していた。

ただ、彼女が向かっているのは銀行ではなく、



執務室だった。








中尉入ります。」








力いっぱい執務室の扉を開く。
そこにはいつものようにロイが椅子に座っていた。









「っ大佐!!」



「やぁ、中尉。来ると思ったよ。」








肩で息をしているにロイは笑顔で答えた。
そんな態度が気に障ったのか、
は眉をひそめ、ロイの机に歩み寄り一度敬礼をし、
キッと睨みつけながら言った。









「大佐、事件のことはご存じですよね。
犯人グループからの声明に、大佐の同行を要請している文章があったことも、
先程連絡が来ましたよね。」



「あぁ、来たが。」











バンッ











「大佐っ!!」








はロイの机に強く手をつき、先より険しい顔をロイに向ける。








「なぜ出動なさらないのですか?!
向こうには人質がいるんですよ?
犯人は銃を所持しているみたいですし、
最悪の場合、どうなさるおつもりですかっ?!」










尚も肩で息をしているを見て、ロイがクスクスと笑う。










「何か・・・可笑しいことを言いましたか。」




「いや、あまりにもキミが懸命なものだから。
まぁ、落ち着きたまえ。」










そう言うと、ロイは机から何かを取り出し席を立った。

は取り敢えず、体勢と息を整える。






「私の部下はなかなかのキレ者ばかりでね。
この程度の事件なら、わざわざ私が出動せずとも巧く片を付けてくれる。」






そう言いながらゆっくり歩き出したロイを、目で追いつつ反論する。






「優秀な方々だということは認めます。
しかしっ!今回は一般人も事件に巻き込まれているんですよ?!
もし・・・もし負傷者が出たら・・」


























「そうだな、いっそのこと負傷者を出してくれた方が早く片が付くな。」






























「っ?!!」





いつの間にかの後ろに立ち、軍人にあるまじき言葉を口にするロイ。

は目を丸くして、自分の耳を疑った。
その目はもうロイを捕らえていなかった。


ロイはそんなを後ろからそっと抱きしめ、言葉を続ける。









「仮に犯人らが人質に負傷させたとしよう。
人を負傷させれば、他の人質はもちろん、
犯人の心にも少なからず動揺が生じる。
まして3人なんだろう?
3人のうち1人でも動揺すれば、張りつめた空気の中だ。
他の2人にも伝染る可能性は高い。

動揺が大きければ大きいほど、な。

あとは言わなくても解るだろうが・・そこを突く。」









淡々と話すロイに、は少し悲しそうに答える。
さり気なく自分を抱きしめている、ロイの腕から逃れようとしながら。






「そのお考えを否定はしません。
しかし、私たち軍人が1番に考えるべきなのは一般人の安全ではないのですか?
誰も傷つかないように・・・犯人も、例外ではなく・・・・・」























「甘いな。」
























を抱きしめる腕に力を込める。

更にの首筋に顔を埋めた。






は恥ずかしくなり、顔を赤くしながら力いっぱい抵抗する。
が、全く無駄だった。











「大佐・・・・・離して下さい。」










「おや、キミは嫌なのかね。」








「嫌だから言ってるんです。
セクハラで訴えますよ。」











それにはロイも苦笑いをしたが、を解放することはしなかった。


そして耳で囁く。































「キミが犯罪を犯すことはないのかな。」





























するとロイは素早くの両腕を掴み、後ろに回す。








「た、大佐?!一体何を・・・・・・」

















ガチャ
















聞き覚えのある金属音。
















手首から伝わる冷たさ。























手錠・・・・・・・・?

























そう、ロイがの両腕に手錠をかけたのだ。


先程机から出したモノは、この手錠だった。











「もし中尉・・・・・が犯人なら、私も犯人が傷つかぬよう全力を尽くすよ。

そして誰よりも先に手錠をかける。
キミを捕まえて、私だけのモノにしたい。」












そこまで言うと、を自分の方に向かせて、
後ろになった自分の机の上に押し倒す。











「きゃっ・・・・・・・・・大・・佐」







「でもキミは真面目な人だから、犯罪を犯すことは無いに等しい。

それでも私はに手錠をかけたかった。」










ロイはに覆い被さり、
顔と顔をぎりぎりまで近づけ続けた。











「そして今、こうしてキミを拘束できた。
でもキミは罪を犯したから捕まったんだ。
何の罪か解るかい?」





「・・・・・・・・・・・・っ!?」










ロイはの答えを待たずに軽くキスをした。


そして涙を溜めているの瞳を見つめながら言う。











「キミは罪を犯した。・・・・・私を狂わせたという罪を。」











するとロイは再びの唇に自分のを重ねる。
しかし今度は、先程と比べものにならないくらい荒々しく、激しく、濃厚。

歯列を割り、舌を絡めてくるロイのキスに、
の頭はぼうっとしてきて、瞳から無数の涙が零れ落ちる。













「んっ・・・・・・ふ・・」














次第に息苦しくなり、は思い切ってロイの舌を噛んだ。












「っつ・・・・・・・・・」











ロイは驚いて唇を話はしたが、体勢はそのまま。







「はぁ・・はぁ・・・すみません、こうするしか・・なかったので・・」







ロイの口から血が流れ、の頬に一滴落ちる。

しかしロイはそんなことは気にせず、口端をつり上げながら言った。
























「私が・・・怖いか、。」



























「今・・の、大佐は・・・・・・怖いです。」
























瞬きをする度に零れるの涙を、キレイに舐めとる。





















肌に伝わるあたたかさは、
自分の涙なのか、
大佐の舌なのか、
大佐の血なのか。




















そしてロイは静かに話し出した。



















・・・人には、どんな人にも表や裏があると思う。
でも、表も裏も自分で、それを相手が知っているか知らないか、というだけの違いだ。
そして知っている方が表で、知らない方が裏。

人は誰しも知らないモノには怖れを感じるものなんだ。
少なからず、な。

























・・・・・・・・・・・・・・・怖いか、私が。」































「・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい。」









小さく一言返事をするの唇は震えていて、
本当に私を怖がっているのがわかった。











私は酷いことをしているな。











愛する者を怖がらせて、泣かせて。



でも、そんなが可愛くて、艶っぽくて、止められないんだ。





























もっと泣いて































もっと鳴いて



























もっと、もっと・・・・・・って。



























の両手を束縛している手錠が、

手首に朱く痕を残していることくらい、わかってる。














だからこれから時間をかけて、
ゆっくりと、私がそれより朱い痕をつけてあげよう。


















カラダに。

















ココロに。





























キミは罪人なのだから。




































***fin***




微エロです。微エロで止めます。
これ以上書いたら絶対R指定になる。
趣味に走っちゃってるし(え・・)
大佐黒いしっ!
ところで銀行強盗のこと、すっかり忘れちゃってますよね。
ははは。リザさん達がどうにかしたということで。

ご感想お待ちしておりますvv
→黒蝶

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