空から燦々とさす太陽。

窓からはそよそよと風が迷い込み、カーテンをなでる。


そんな38℃の暑い日。
















「戦利品」
















「って、なんっっっで工事ごときでクーラー使用禁止なんですかっ
ホークアイ中尉ぃ〜〜〜っっ」



「業者がそう言ってきたからよ、准尉。」




手で一生懸命扇ぎつつ、必死に抗議するに、
さらりと返すホークアイ。

時間は2時ちょっと過ぎと、一番暑い時間帯。

以外の者も、口には出さないものの、この暑さにはまいっていた。





「それにクーラーは人体にあまり良くないわ。
健康のためと思って我慢しなさい。」



「確かに窓開けとくと、ハボック少尉の煙草の煙がこもらなくていいですけど・・・・・」


「ぁんだと?!すってんのオレだけじゃねぇだろっ」






が小声で言ったのが聞こえたようで、
ハボックはすぐさま反論した。
は口を尖らせて、ふて腐れたように言う。




「ほらー、ハボック少尉も暑さで苛々してますよ。」



「お前のせいだっつの!!」




ハボックは思わず椅子から勢いよく立ち上がってしまった。

するとホークアイが咳払いを一回。
とハボックは小さく「スミマセン・・」と言って席に着いた。





「はぁ・・怒ったらよけー暑くなった・・・・・。
お前のせいだからな、。」


「なっ、八つ当たりは止めて下さい少尉!」





あいにく2人は席が隣で、席に着いてからも小声で小競り合いをしていた。

が、暑さからくる苛々と、なかなか決着のつかない小競り合いで、
2人の声は徐々に大きくなる。




「この際だから言わせてもらいますけどねっ
女の人にふられるのは煙草の吸いすぎも原因なんですよっ!!」



「なぁーにぃー?!解ったような口利きやがって!
そういうお前だって彼氏いないじゃねーかっ!!」


「っそれは・・・」






カチャ





「「へ?」」







とハボックが今にも取っ組み合いそうな時、
ホークアイが銃を取り出した。

一瞬にして動きが止まる2人。







がちゃ







そこへタイミング良くドアが開く。


ドアを開けたのはロイだった。






「大佐・・・?」



「やぁ、准尉。キミの声は廊下まで良く響いていたよ。」





クックックッと笑いながら中に入る。

入るや否や、各々のデスクの上の書類の山を見た。
のデスクの上は格別多かった。





准尉、仕事がはかどっていないようだね。」


「え?あ、えっと・・・そのぉ・・・・・スミマセン。」





は身を縮めながら謝った。
ロイに謝ったからといって、書類が減るわけでもないが。

するとホークアイがわざとらしく咳払いをし、
ロイにキッと視線を送りながら言った。





「大佐、人のことよりご自分の仕事の心配をされたらいかがですか。
確か、准尉と同じくらいありましたよね。」



「はは・・・・・はははは。いや、そのことなんだが、准尉。」


「・・え?!ぁ、はい!な、なんでございましょうか?」





まだ身を縮めていたは急に自分の名前を呼ばれ、
言葉が微妙に変になっている。

ロイは笑いを堪えつつ続けた。




「私とちょっとした勝負でもしないか?」





「勝負・・・・・ですか?」







思いもよらないロイの言葉に、はキョトンとしている。
が、以外の者は、ロイがまたよからぬことを考えているのが解り、
次々にため息をつく。

そんな周りの反応は気にせず、ロイが続ける。





「あぁ、ただ勝負だからな。戦利品が無いと盛り上がらないだろう?」





“戦利品”という言葉に反応を示す
ロイの思うつぼだ。











「そうだな・・・・・アイスなんてどうだい?
この暑さだし、ちょうどいいだろ。
どうだね、やるかい?」











周りにいた者は言葉が出なかった。

いい大人の勝負の戦利品がアイス・・・。
それを聞いていたハボックが、小さくホークアイに耳打ちする。



「アイスなんかでつれるんっすか?」


「さぁ。でも大佐、よく准尉の観察されてたみたいだから。」


「えっ、それってヤバイんじゃ・・・・・・」



ホークアイの衝撃の一言で固まるハボック。

大佐も大佐だが、黙認していた中尉もどうかと思い、
もうすぐのところで言いそうになったが、
まだ死にたくないらしく、咄嗟に両手で口をおさえた。

そしての方に視線をずらすと、なにやら俯いてブツブツ言っている。





「アイス・・・勝ったらアイス・・・・・・・・・。」




かなり怪しい、と思った次の瞬間、目に入ってきたのは、
小さくガッツポーズをしているの手だった。





「おい、まさか・・・・・」






「やりますっ大佐!!」




「マジかよっ」






すかさずつっこむハボック。
同時にロイがニヤリと笑う。




「大佐、勝負するのはご自由ですが仕事をちゃんと・・・」






「安心したまえ、中尉。准尉とのアイスを賭けて行う勝負・・・それはっっ


題して“お仕事どっちが早く終わるかな?”だっっっ」







『まんまじゃん・・・・・・』






燃やされたくないので、心の中でつっこむハボック。
ハボックの心のつっこみの通り、何のひねりもないタイトル。

わかり易いといえば、わかり易いが。




「よーっし!そうと決まれば早く始めましょう。
アイスが私を待っている・・・!!」



「ではハボック、デスクを借りるぞ。」


「どーぞ。」




ロイはハボックの椅子に座ると、フュリーに書類を持ってこさせた。
ホークアイが今日中の書類をそれぞれのデスクの上に置く。
両者ともかなりの量だ。





「お二人にはその書類を全て仕上げてもらいます。
制限時間はなしで、どちらか一方が終わった時点で終了です。
でも終わらなかった方は、引き続き作業していただき、
必ず今日中に仕上げてもらいます。

尚、枚数的に大佐の方が多かったので、
准尉には明日までの書類を数枚増やしておきました。」




「ぷっ・・私の方が少ないんじゃん♪」


「准尉、今何か言ったかな?」


「いーえー?」




「お二人とも、準備はいいですか?」




「はいっ」


「あぁ。」





「では。よーい・・・始めっ」





ホークアイの開始の声と同時に、もの凄い勢いでペンを進めるとロイ。
いつもがこのペースなら・・・と思わずにいられないホークアイだった。





















1時間、2時間・・・と過ぎ、二人ともだんだんペースが落ちてくる。
疲れと暑さで開始前の元気はすでになかった。



そして開始から約4時間後・・・・・・









「終わった!!」









先に声を上げたのはロイだった。

の動きが止まる。
なぜならもあと2枚で終了だったからだ。

といっても、それは明日までの書類だが。


とてもにこやかな表情で伸びをするロイを、
は涙を瞳いっぱいに溜めて見上げた。

ロイはびっくりして少しあたふたした後、
取り敢えずの頭を撫でながら言った。





「そんなに勝ちたかったのか?」



「・・・・・・うぅ・・アイスぅー・・・」



「は?」






ロイだけではなく、仕事を終え帰る支度をしていた者たちも振り返る。

は純粋にアイスの為に勝負していたようだ。
ロイは笑いつつに言う。





「勝負に勝ったのは私だが、アイスは准尉にあげよう。
その代わり・・・・・・」





























ちゅ。




























「た・・・・・た、いさ?」









ロイはアイスの代わりにの額にそっと口付け、ニッコリと笑った。

は頬を赤くし、唇が触れた部分を手で覆う。




「さぁ准尉。アイスを買いに行こうか。」



「え、あ・・・・・はい♪」




そして二人は仲良く出て行った。
完全に二人の世界である。

周りではまだハボックが残業してるというのに。

ハボックはソレから目をそらし、仕事を続けた。
軽く舌打ちをして。









「結局・・大佐かよ。」















***fin***




最近暗い作品ばかりだったので、
ちょっと明るめというか、アホっぽいのを書いてみました。
またハボックふられてるし(笑)
ごめん、ハボ。そしてハボ好きな方。
私の中でハボは、もう立派なふられキャラです。
そして好きな人は大佐にとられる!
・・・いつかハボ夢書こうかな。
なんか可哀相になってきたι

ご感想お待ちしておりますvv
→黒蝶

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