長い


長い



螺旋階段を上って


辿り着くのは天国か地獄か



君の元へ


行けたらいい・・・・












「螺旋階段」











「おはようございます。マスタング大佐。」

「あぁ、おはよう。少尉。」



廊下で会って並んで歩く。

歩幅が小さいに合わせて、
少しゆっくり歩く。


まだ眠そうな顔をしているを見て、
また一段、階段を昇る。


一体、どこまで続いているのだろう。





上を見上げても

螺旋階段が続くのみで


光で見えないのか



何もないのか


真っ白で。






下を見下ろしても

また螺旋階段しか見えず


恐怖からなのか



だいぶ昇ってきたのか


ただ

ただ


真っ暗で。







「では大佐、私はここで失礼します。
また後程、書類の提出で伺います。」


「何時頃だ?」



今日は会議など何も予定がないから、
いつ来ても私は執務室に居るだろう。

だが、少しでもの傍にいたくて、
つい引き止めてしまった。



「14時頃になるかと思います。
ご都合・・悪いでしょうか?」


「いや、大丈夫だ。執務室で待っているよ。」



敬礼して背を向けた


私は手を伸ばし、彼女の肩に手をかけた。



「え・・・・」



驚いて振り向き様のその表情が可愛くて。

でも驚いているのはばかりではない。


私自身、心底驚いている。


女性の肩に手をかけて呼び止めるなんて、滅多にしない。


考えるより早く、体が動いた。



「・・・・・大佐?」



不思議そうにが見ている。



一瞬、


螺旋階段が歪んだ気がした。




「・・いや、ランチを一緒に、どうだね。」



はきょとんとした後すぐに、清楚な笑顔で答えた。




「よろこんで。」













軍服のまま街へ出て、洒落たカフェに入った。

いかにも女の子が好みそうなインテリアのお店で、
きっとも気に入ると思い連れて来た。




「軍服なのが、勿体ないな。」




本気でそう思った。


思わず口にしてしまった。



は動きを止め、またキレイに笑った。




「大佐も、飲み物はジュースよりブランデーの方が、
ずっとお似合いですよ。」


「はは、お互い勤務中なのが悔やまれるな。」




軽く笑いあう、この雰囲気。

から流れる穏やかな空気が心地良い。




また螺旋階段の出口が遠く感じた。




そもそも、出口などあるのだろうか。





いつから、昇り続けているのだろうか。





いつまで、昇り続けるのだろうか・・・・・・。







「ごちそうさまでした。とっても、おいしかったです。」


「私もこんな楽しい食事は久しぶりだったよ。」



が腕時計を見る。

その動作一つ一つが美しい。




花壇を彩るどんな花も、

青く澄んだ大空も、


の美しさを引き立てるものにすぎない。





「今度、ディナーに誘ってもいいかな。」





目を丸くして私の姿をとらえている君は今、
何を思っているんだろう。


少し頬が赤くなった。


自惚れていいのか?


でも明らかに困惑の表情。





螺旋階段が下の方で崩れていく音がした。

時機にここも崩れるのだろう。





「いや、忘れてくれ。
君ほどキレイな人なら恋人がいるのだろう。悪かったね。」

「ち、違うんです!!」





頬の赤みが増して、少し色っぽい。

今度は私が目を丸くする。

その言葉も行動も全くの予想外。



「あの、私、恋人なんていなくて。
大佐が食事に誘ってくださるなんて嬉しくて。
大佐と食事していると楽しくて・・・。」




下の方で崩れた階段は


戻らぬように


戻れぬように、と崩れただけ。




「ではディナーは、ドレスにブランデーで、な。」

「ふふ・・はい。」



やはりの笑顔はキレイで、
人は彼女のような人のことを『美人』と呼ぶのだろうと思った。




まだ螺旋階段の出口は見えないが、

眩しすぎた光が和らいだ気がした。




君の元へ


行けるといい・・・・














***fin***




電車の中から見た、
赤い螺旋階段が元。
あと、昔書いた詩にも螺旋階段ってのがあって、
じゃぁ書くか。みたいなノリで。

ご感想お待ちしておりますvv
→黒蝶

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