あの日、私が打ち放ったピストルは
あの人の身体を滅する事も叶わず
心に恐怖を植え付けることも出来なかった

それどころか、あの人は
あの時、あの状況を楽しんでいた。






愚かな私を 嘲笑うかのように













「PISTOL」












「マスタング大佐。」




が俯きながら言う。
ロイはから視線を外さずに、次の言葉を待つ。

はもったいぶるかのように、充分な時間をおく。


その間に今の状況説明をすると、
場所は東方司令部。
と言っても、時刻は夜中の3時をまわっており、
残業をしていたとロイ以外の者は帰宅している。

そして5分ほど前、その東方司令部に銃声が鳴り響いた。
それはがロイに向けて放ったものだが、
ロイには命中せず、今立ちながら向き合っている2人に至る。


ようやくが口を開く。
握ったままのピストルを見つめながら。




「大佐は、2年前の事を覚えてますか。」


「あぁ、私がをセントラルからここに連れてきた年だな。」




ロイは即答した。
自信有り気に少し笑顔を作りながら。




「・・お言葉ですが、階級名を付けてください。非常に不愉快です。」




そんなロイに対して、は睨みつけるように鋭い目つきで言った。
それにはロイも苦笑いするしかなかった。




「では、大尉。その2年前がどうしたと言うのだね。」


「2年前、私は純粋にあなたのことを尊敬していました。
その若さにして大佐の地位につき、錬金術の腕もかなりのもの。
だから私は大佐について来いと言われたとき、
迷うことなくついて行くことに決めました。でも・・・・・」




はそこでいったん言葉を区切り、
再びロイに銃口を向けた。










「私は大佐以上に、ブラッドレイ大総統を尊敬しています。
その大総統を脅かし、その地位を狙うあなたを許さない。」










の眼は真剣だった。
しかし、ロイは微笑を浮かべながら言った。



「何かと思えば、そんなことでこの私に発砲したのかい?
だったら・・・・」


「もう1つ。尊敬とともに抱いていた想いがあります。」




がロイの言葉を遮る。
ロイは「ほぅ」と顎に手を当てる。














「その想いは『憎悪』です。













大佐のその、人を見下した態度がこの上なく腹立たしいです。」




するとロイはに数歩近寄った。
微笑したまま。



「それ以上近づくと撃ちますよ。」



ロイはの言葉を無視し、手を伸ばせば届く距離まで近づいた。
は銃口をロイの顔に定めた。
ロイはそんなことお構い無しに言った。





「私も大尉に2つの感情を抱いている。
1つは優秀な部下としての信頼。
もう1つは何だと思う?」





そう言ったロイの顔は真剣で、
は『信頼』という言葉に、胸が痛んだ。
今、その信頼を裏切り銃口を向けているのだから。
























「それはね、愛情だよ。」






















の返答を待たずに言ったロイの言葉に、は一瞬怯んだ。

ロイはその隙を見逃さなかった。
その一瞬でが握っていたピストルを左手で抑える。
引き金の部分には、人差し指を入れて撃てない様にした。











見事。











まさにその言葉通りの身のこなしようだった。






「流石ですね。隙をつくり、そこを突く。
あんな冗談に怯むなんて私も・・・・」










「冗談なんかではない。」










今度はロイがの言葉を遮る。






「私は冗談なんかで銃に立ち向かっていけるほど、馬鹿ではないんでね。」








いつもならそこで微笑の一つでも零すロイだが、
尚も真顔で真っ直ぐにを見つめている。



綺麗な顔立ちをしたロイに、至近距離で見つめられ
は気恥ずかしくなり、眼を逸らす。






「君が私に抱いている『憎悪』という感情・・・
それは『愛情』も最も近い感情だと知っているか?」


「・・・・・・・・・・。」



「そのことは君の方が、良く知っていると思うがね。」






はその言葉にカッとなり、空いていた左手で小型銃を素早く取り出し、
ロイの喉仏に突きつけた。






「ピストルは1つとは限りません。」






睨みつけるに、ロイはふっと口端を吊り上げた。






「用意周到だな。だが・・利巧、とは言えんな。
君のその銃と、私の錬金術・・果たしてどちらが早いものかな。」





そう言うと、ロイはポケットから右手を出し、
錬成陣の書かれた手袋をちらつかせる。

は軽く舌打ちした後、冷笑を浮かべて言った。

















「私が死ぬ時は、大佐。あなたも一緒です。」
















、君と一緒に果てるのなら本望だよ。」


















いつの間にか階級名を付けずに『』と呼ぶ声は、
心なしか淋しそうだった。









大佐に・・名前で呼ばれるのは、嫌じゃなかった。
大佐が口にすると、私の名前が少し・・特別のように聞こえた。


悔しいけど、大佐の言うとおり
私は大佐を愛しているのかも知れない。





そんな事を考えてると、ロイの右手がの顔に近づいてきた。











殺ラレル・・・・───────











そう思った瞬間。


発火布で出来た手袋は、擦れ合うことなく、
の後頭部に回され、強引に引き寄せられた。





「なっ・・・・大佐離し・・」
















「ついてこい。

大佐の部下としても、ロイ・マスタングという人間の最愛の者としても。」
















涙が、出そうになった。



深い理由なんて解らないし、別に知りたくもない。














唯、私が殺そうとしていた相手を






















私は殺したいほど愛していた。





















それだけのこと。












「じゃぁ、大佐が死ぬ時は私が殺す時ですから。
それまで生きてください。」




「あぁ。その代わり、その時は君も道連れだ。」












大佐がそう言ったとき、
私は抱かれてて顔は見えなかったけど、
きっといつものように嫌な笑みを浮かべているに違いない。



そういう所が嫌いだけど好き。



なんとも不思議な感情で、気持ちが悪い。






ロイはの首筋にキスをしてから、を開放した。


ユウコの嫌う笑みを浮かべながら。





















あの日、私が撃ちはなったピストルは
あの人の身体を滅する事も叶わず
心に恐怖を植え付けることも出来なかった













でもあの人を殺すのは私だから。













私の心は奪われたけど、私はあの人を手に入れた。

















だからまだ殺さない。

















愛してるから。























***fin***




コレは出だし決めてから書きました。
だから内容、困った困った(笑)
だって大佐を大尉がピストルで撃つって
どんなシチュエーションだよ・・・・・・・。
無理ありだろ・・・・・。
でもダチの為に書いたものなんでvv(鬼)
勘弁してください・・・。

ご感想お待ちしておりますvv
→黒蝶

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