「愛して」
『、僕だけを愛しては・・・くれないのかな・・・?』
愛して
今日は朝から曇り空だった。
青学テニス部員も、その雲行きを常に心配しながら練習に取り組んでいた。
マネージャー2年、もその一人。
「大丈夫かなぁ〜?まだまだこれからなのに・・・・・」
タオルを片手に、心配そうな目で空を見上げる。
そんなの様子を、レギュラー陣の一人である不二 周助は、コートからにこやかに見つめていた。
「くすっ・・・空とにらめっこでもしているのかい?」
「あっ、不二先輩!」
お疲れ様です!と、は可愛らしい笑顔で、コートから出てきた周助にタオルを渡した。
「ありがとう。・・・・・雨、降りそうだね。」
周助は渡されたタオルを首にかけながら、さっきのと同じように空を見上げた。
「そうなんですよぉ。何かもう心配で・・・」
それを見て、ももう一度空を見上げる。
空は一面濃い灰色に覆われていて、いつ降り出してもおかしくないようだった。
少し冷たい風がの髪を撫でる。
心配そうに空を眺める彼女をまた見つめて、周助は視線をコートに移した。
コート内では、レギュラー陣が一生懸命になって練習しているようだ。
・・・不意に周助が口を開く。
「」
「・・・あ、はい!」
「部活が終わったら・・・部室に残っていてくれないかな。」
「えっ?あ、はい・・・」
「くすっ、よろしく頼むよ。」
そう言い残して、周助はコートに戻っていった。
───────・・・心配していた雨は、その後30分もしない間に降り出した。
「お疲れ様でしたーーーっ!!!!!!!」
雨が降ったのは予想通りだったが、誰がこんなに激しいと予想できだろうか。
本当にどしゃ降りだった。
部活は早めに切り上げられ、ほとんどの部員がこのどしゃ降りの中を走って帰っていった。
─────と不二を除いて。
「やれやれ・・・・・・こんなに凄いとは、ちょっと予想外だったかな。」
「本当ですよねぇ〜。台風でも来たのかなぁ?」
一番最後に部室に入ったのは、ずぶ濡れの周助と。
室内にはまだ手塚がいた。
「て、手塚先輩!あの・・・まだ帰ってなかったんですか?」
手塚は今丁度着替え終わり、帰り支度をしているところだった。
しばらく何も応えずにいたが、バッグを肩にかけて立ち上がり、くるりと正面を向いた。
その端正な顔立ちに、は頬を赤く染める。
ドアの所ですれ違いざまに、手塚が声をかけた。
「・・・早く帰れ。風邪をひくぞ・・・」
「はっ、はいぃ!ありがとうございます!あの・・・お疲れ様でしたっ!!!!!」
あたふたと赤面しながら礼をするの方は向かず、手塚は手を上げて雨の中を歩いていった。
周助は、顔を赤くして可愛らしく照れているを見つめた。
───────・・・僕のことは・・・見えていないみたいだね・・・・・・───────
切れ長の彼の目が開いた。
その顔から笑みは消え、憎悪さえ含んでいるように見えた。
もっとも、舞い上がり気味のには見えていないのだったが・・・・・・・
「・・・・・・痛ッ!?」
急に周助は、の腕を掴んで、室内に突き飛ばすように入れた。
後ろ手にドアを閉め、鍵までかけた彼の表情には、背筋をゾッとさせた。
「・・・不二・・・先輩・・・・・?」
「は・・・・・手塚が好きなんだろ?」
周助の鋭い目が光遥葉を捕らえて離さない。
恐怖さえ覚えた。
「・・・・・・・・・・・・」
が返答に困っていると、周助は黙って自分のロッカーからズボンのベルトを取り出した。
雨に濡れたために身体が冷えてきたのか、それとも周助の目が怖いのか、はカタカタと小刻みに震え出した。
「・・・そんなに怖がらないで。」
周助は哀しそうに笑った。
ロッカーを閉めると、の前にしゃがみこんで、彼女の濡れた髪に手を添える。
「綺麗だよ・・・・・・・・・」
動けない彼女の頬に口付けをしながら、耳元でそっと囁いた。
そのまま持っていたベルトで、の両腕をすばやく束縛する。
「ふ・・・不二せんぱ・・・・・」
「、僕だけを愛しては・・・くれないのかな・・・?」
が言い終わる前に、周助が真剣な顔つきで言った。
もう彼の目に憎悪がこもったような鋭さは消えていて、どこか哀しそうだった。
そしての目から流れる涙を指で拭う。
「君はいつも手塚を見ている・・・。分かっていた事だけど、、諦められなかった。」
周助はもう一度の髪をすくうように撫でた。
「愛してるよ。」
はまた涙を零した。
・・・全く知らなかったわけではない。
周助の態度が他の女子とは違っていたことは、なんとなく分かっていた。
今ひとつ信じられないではいたが。
だがは周助の言うとおり、手塚に恋心を寄せていた。
テニス部のマネージャーになったのも、そのためだ。
・・・周助に少しも関心を抱いていなかったと言えば、嘘になる。
手塚と違って話しやすいし、いつもにこにこと笑顔。
優しくて、手塚に負けないくらいの美形・・・・・・・・・
手塚と正反対といってもいいくらいではある。
しかし一つだけ、いつも何を考えているのか良く分からない点があった。
「・・・離して・・・下さい・・・・・」
消え入りそうなか細い声で訴えた。
周助はその言葉を聞くと、また哀しそうに笑った。
「この雨が止むまでは・・・・・・僕のモノでいて欲しいんだ・・・」
そう言って、の頬に手を添える。
激しい雨音が聞こえる。雨は当分止みそうに無い・・・
の恐怖は不安に変わった。
「先輩・・・・・・私・・・・・・・・・ッ!?」
言いかけたの言葉を、周助は唇を重ねて遮った。
ベルトで束縛した腕を押さえて、そのまま床に押し倒す。
ひんやりと、冷たくて固い床の感触が、の背中に伝わった。
「・・・・ッ!」
は首を振って周助の唇から逃れる。
・・・冷たい雫が、上から彼女の頬に落ちた。
それは周助の涙なのか。それとも彼の髪から滴り落ちる雨の雫なのか。
彼の表情は、にはよく見えなかった。
「僕だけを見て・・・・・・・」
聞こえるか分からないほどの、か細い声。
その声は、わずかに震えていたような気がして。
「僕だけを・・・・・・・・・」
───────・・・愛して・・・───────
周助はまた、に口付けた。
激しい雨音が聞こえる。雨は当分止みそうに無い・・・
***END***
きゃぁ〜☆不二の監禁モノですよぉ( >_< )
不二の悲恋モノっていうのも結構珍しいかも?
こう、ぐっときますね・・・!!
私がこんな事になったら、かなり嬉しいかも・・・・・・vvv(笑)
青玉ありがちぃ〜の☆☆☆(*^-^*)
→黒蝶
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