「方向音痴」




「あー・・左だったかな。でも右だった気もする・・・。
いいや。直進しよ。」



しょっぱなから訳の解らぬことをぬかしているのは
は数日前、撥春に「遊びに来れば?」と言われ、
今日遊びに行く約束をし、草摩の本家へ行く途中だった。

しかしは今、道に迷っている。
は撥春に勝るとも劣らない方向音痴なのだ。
そして性格も撥春に似ていて、おっとりしているというか、
マイペースでキレるとかなり恐い・・・。
が、よほどのことがない限りキレないので、撥春よりはましだった。



「やっぱ左だったかな。・・・・・・・・・・・ココ曲がればいっか。」



ビジュアル的に優れた容姿をしているため、男共だけでなく女子生徒にまでもてている。
このかなりアバウトな思考も、長所として受け入れられている。



「あれ。ココ・・・・・・・・・・・・・・何処だろ・・・・?」



適当に曲がったりしていた為、当然の如く見知らぬ所へ来てしまった。
これは本当に長所だろうか・・・・・。


そうこうしているうちに日が暮れ始めてしまった。
白い月が薄っすらと浮かんでいる。
は未だ見知らぬ土地を彷徨っていた。



「もぅこんな時間だ。春ん家に行くのは明日でいっか。
今日は帰ろ。・・・・・・・・・・どっちに行けば帰れるかな・・・。」



長所とされていたアバウトな思考がアダとなり、
は自分の家に帰る事すら出来なくなってしまった。

さすがのも動揺したらしく、辺りをキョロキョロと見渡している。



「こういう時は、おまわりさんの犬に名前を尋ねなきゃ。
春が教えてくれた事が役にたった。感謝だな。うん。」



撥春は一体何を教えたのだろうか。
あるいはが覚え間違いをしているだけだろうか。
・・後者が有力だとは思うが。

とにかく交番を探す事約2時間半・・もうすっかり夜だ。
夜空に星が輝いている。
は交番を目の前にしながらも、夜空の星に見入っていた。



「キレー・・・・。春にも見せたいな・・コレ。」



そうすること約30分。お巡りさんが30分も立ちっぱなしのを不審に思い、話し掛けてきた。



「君っそこの君!!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、えっと、私ですか?」

「君以外に誰がいるんだね?!こんな時間に女の子の一人歩きは危険だから、
早く家に帰りなさい!(か、可愛いな・・・この子)」



はボーっとしながらお巡りさんの話を聞いていたが、
の顔が次第に笑みを帯びていく。

そしてお巡りさんの方に向き直り、今までのからは予想も出来ない程、強気で言った。



「平気です。だって、ピンチの時はいつも春が助けに来てくれるから。」

「ピンチの時って・・君ねぇ・・」







、やっと見つけた・・・。」







とお巡りさんが話していると、急に誰かがの名を呼びなにやら近づいてくる。
暗闇で遠目では陰しか見えていなかったが、近くまで寄ってきて誰かを確認する事が出来た。

そこには白髪の、銀のアクセをたくさん身につけた男がいた。



「あ、春だ。やっと会えたね。」



そう、その男は撥春だったのだ。
撥春は黙ってとお巡りさんの間に割って入ってきた。

そして突然・・・・・───────





バキッッッ



「ぐはっっ」



・・・・・・・・ドサッ






「てめぇ、俺のに手ぇ出そうなんてイイ度胸してんじゃねーか。あ゛?!!」




撥春はB(ブラック)になっていた。
そしてお巡りさんにトビッキリの回し蹴りを喰らわせたのだ。

きっと撥春には、お巡りさんがにナンパか何かをしているその辺の男にでも見えたのだろう。
・・・・相当無理があるが、そういうことにしておこう。


すると、もうすでに伸び切っているお巡りさんの胸ぐらを掴み、
撥春は尚も殴り続けようとしていた。
それを見ていたが、くいっと撥春の袖を引っ張った。



「春・・・・・・。」

「なんだよっ?!まだこいつに・・・・・・」



撥春が言いかけて、は自分の顔を撥春の顔に近づけてから言った。



「だぁめ。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、このまま抱きしめちゃいたい。」



たった一言だったが、撥春はいつもの撥春に戻り
お巡りさんを投げ捨て、の頬に手を添えながら言った。



「それもダメだよ。・・・・ココ、交番の前だから。変身なんてしたら・・・」

「じゃ帰ったら抱かせてね。」

「・・帰れたらね。」

「・・・?」



が不意に変な事を言ったので、撥春は首を傾げた。



「春が回し蹴り喰らわせたの、お巡りさんなんだよ。」

「・・・・・・・・・・・、逃げよ。」



やっと状況を把握し、撥春はの手をとり走り出した。
はそれにひたすら着いて行くだけ。


15分ほど走り、段々とスピードを落とし、今度はゆっくりと歩き出した。
掴んだの手はそのままで。



、大丈夫だった?無理矢理引っ張って来ちゃったけど・・・・・。」

「ん、何とか。それよりさ何で春、あんな時間にあんな所にいたの?」

「んー・・・・・・俺たちの愛は千古不易だからだよ。」

「・・・?よく解んないけど、ありがとぅ。」

「うん。」



が少し照れながらもお礼の言葉を伝えたから、
撥春は嬉しくなって、柔らかく微笑んだ。



「ところで春。私・・帰り道解んないんだけど、どうすればいい?」

「そっかー、じゃぁうちに泊まってきなよ。のお母さんには電話入れればいい。」

「うん。そうする。」

「・・・そういえば、俺も解んなくなってきたんだよね。
どうしよ。ココ・・・・・・・・・・・・・・何処だ・・・・?」



結局二人は散歩のようにフラフラと歩き続け、
行方不明になっていた撥春を捜索していた草摩の人たちに保護されるのだった。





***fin***

■注:撥春の撥は本当はへんがサンズイなのですが、出ませんので類似字を使わせて頂いています。






撥春ドリーム書いちゃいましたよ。
内容微妙でゴメンナサイ。っていうか、夾くんのドリの題名の「似たもの同士」って・・
こっちの方が合ってるんじゃ・・・・・?(滝汗)

えー・・・はいっここでちょっくらお勉強♪(何っ)
このドリで春が言っていた「千古不易」とは・・
どんなに時が過ぎようと永久に変わらない事、という意味です☆★
素敵な言葉ですよねぇvv

→黒蝶


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