「DEEP + PAIN -2-」
を引き取った紫呉は、に高校に通うようにと言った。
最初はは拒否というか、遠慮をした。
勿論お金がかかるからというのもあったが、が1番考えていた事は
いつまでこの家に居られるか解らないからだった。
しかし、紫呉がどうしてもとを説得し、
同居人の透や由希・夾と同じ高校の編入試験を受けさせた。
そして編入試験も無事突破し、教材や制服などの必要最低限のものは揃えた。
部屋も『の』部屋が用意された。
「あっれー?ちゃん、荷物は?」
引越しの手伝いをしていた紫呉が問う。
は顔を背け言った。
「全部捨てた。・・・・・あの女の匂いがしないものは無かったから。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
紫呉は返す言葉が見つからなかった。
とりあえず制服はクローゼットの中に。
教材も紫呉が入学祝で買った机に立て掛けた。
「もうすぐベッドが来るから、それまで休んでるといい。
何かと疲れただろう。肉体的にも・・精神的にも。」
紫呉が気を使っての肩をぽんっと叩きながら言った。
しかしはそれを払い除け、紫呉を強く睨みつけた。
「お前の目的はなんだ。金か?私の身体か?
何故良く知りもしない私を・・ここまで優遇する。」
勢いよく吼えるに、紫呉は一瞬驚いたが
ふっと笑い、の頭を一撫でしてから言った。
「僕は餓鬼からお金を巻き上げなきゃならないほど貧乏じゃないし、
君を襲うほど餓えては無いんでね。安心して。」
紫呉の毒のある言葉には顔を赤くした。
そこにコンコンと2回ドアを叩く音がした。
振り向くとそこには綺麗な男が一人。
「紫呉、あんまり意地の悪い事ばっか言ってると嫌われるよ?」
「だって由希くぅーんっっ」
「寄るな、変態。」
華奢な身体からは想像できないほどの蹴りが一発、紫呉の腹に直撃した。
そんなやり取りを呆然と見ていた。
紫呉が由希にのことを話し、挨拶を促した。
「あ、えと草摩由希・・・です。同学年で明日から同じ高校だよ。・・よろしく。」
由希がスッと手を差し出したが、は自分の名前と
心のこもっていない「ヨロシク」という言葉を放ち、颯爽と部屋を出て行った。
由希は差し出した手を強く握り、の後を追い部屋を出た。
「・・・青い春だねぇvv」
紫呉がそんな事を呟いているうちに、2人は既に外に出ていた。
「・・・・・・待ってよ。」
を追いかける由希。
由希を気にも止めず歩き続ける。
日は陰って気温も下がってきている。
「そんな薄着じゃ風邪ひくよ?」
由希が心配そうに言う。
しかしは無視。
それには由希も少し苛ついたらしく、歩く足を速め、の腕を掴んだ。
「・・っ離せ。」
「嫌だって言ったら?」
由希は厭味っぽく笑い、の腕を強く握り離そうとしない。
男の力に大して力の無いがかなう訳も無く、
は小さく舌打ちをした。
「何故私にかまう。紫呉という男といい、あんたといい・・・」
「ほっとけないんだよ。」
由希はの言葉を遮るようにして言った。
は拍子抜けしたような顔をしている。
「何ていうか・・・・・・上手く言えないけど、俺も親の・・愛、とかあんまり受けずに育ったから。
さんの気持ちが少し・・・解る気がして。
気になって、ほっとけない。」
あまりにも由希という男が・・真っ直ぐ瞳を見つめて言うもんだから、
弱音を吐きそうに、なる。
虚勢が・・・・・・崩れていく。
大人たちは誰一人として聞こうとしなかった本音を、
は由希に全て話した。
綺麗なことばかりじゃないけど、言うのすら辛い事もあったけど・・
私の手は、ずっと暖かかったから。
「・・・・今まで色々、あったんだね。
ソレを乗り越えてきたさんは強いと、思う。」
由希は薄っすらと星が出始めている空を見上げて言った。
「充分すぎるほど苦労してるし、自立もしてる。
・・もう、その母親に縛られること・・・無いんじゃないかな。」
今度は□□□に優しい顔を向けながら言った。
「だから・・復讐、とか言わないで。
復讐なんてちっぽけなものの為に、さんの人生が在る訳じゃ、ないんだ。
さんは・・母親の為に生きている訳では、ないんでしょ?」
そう言って優しく頭を撫でてくれた由希の手は、暖かくて・・
不思議と涙が止まらなかった。
しばらくしても涙が止まらないに由希は、
「涙が止まるオマジナイ」
と言って、の瞼にキスをした。
そしてから、涙の代わりに笑みが零れた。
少しずつ傷が癒えていく。
人の手によってつけられた傷が
人の手によって
愛によって
癒されて、満たされていく。
***fin***
壱周年記念企画、阿部 みなみさんからのリク夢でした♪
この由希君夢は、壱周年記念の3作で一番悩みました。
書き進むにつれ話がどんどん変わってって、
最初は夾が出てきたり、あーやが出てきたりって感じだったのに、
□□□さんと由希君と紫呉の3人って・・・
あとママね。嫌なママ。
DVは本当、しちゃいかんと思う。
では、話が重くなる前に☆
ご感想お待ちしておりますvv
→黒蝶
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