「冷めたコーヒー」
午前4:00
無限城にも静寂が訪れる頃。
マクベスは1人でパソコンの前で眠りについていた。
横には朔羅が出したであろうコーヒーがある。
それは半分ほど残っていて、既に冷め切っている。
静かに流れる時間。
「気持ち良さそうに眠っちゃって。いい身分ね。」
急に少女の声が部屋に響いた。
高くはなく、低くもない透き通った声。
足音などはしなかった。気配も感じさせなかった。
でもマクベスは少女がココに訪れる事は知っていた。
「・・・・・・やっと、来たんだね。」
マクベスは体勢は変えず、声だけを返した。
いたって冷静に。
少女はそんな態度が気にくわなかったのか、小さく舌打ちをした。
「ふんっ・・・私が来るのは計算済みってわけ。」
「ちょっと計算がいなことはあったけどね。」
そう言うと、マクベスはクスッと笑った。
その微笑に少女は冷たく返した。
「あんたにも計算ミスなんてことがあったのね。・・・人間らしくて良いんじゃない?」
「その計算外のことっていうのは、君がココに来る時間がもっと早いと思っていたんだよ。
まさかあんな雑魚に、あんなに時間をかけるとはね。」
少女はマクベスの言葉にカッとなり、一気にマクベスの首を目掛けて走った。
「ベラベラと良くしゃべるのね。でも・・・誰もあんたとお喋りしたくてこんな所に来たんじゃないわよ!」
そう、少女は依頼を受けマクベスを殺しに来た暗殺者だったのだ。
マクベスはあっさりと首を腕で固められてしまった。
冷めたコーヒーはカップごと倒され、床に広がっていく。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・何故逃げない。」
マクベスはゆっくりと瞳を閉じ、静かに息を吐いた。
「君には僕を殺す事はできないからだよ。」
少女は瞳を見開き、マクベスの首に巻かれた腕に一層力を込める。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・何故そう言い切れる。」
その問い掛けにマクベスは答えなかった。
すると少女がマクベスの答えを待ちきれず再び問う。
「何故そう言い切れる?私はあんたを殺しに来た暗殺者なんだぞ?
ソレを解っていながら、何故みすみす私をココまで来させた?
あんたには強い仲間がいるんだろう?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・何故私を殺してくれないんだ・・・。」
マクベスの首を捕らえていた腕は、こぼれたコーヒーの上に落ちた。
少女は床に座り込み一筋の涙を流した。
瞳を、見開いたまま。
「君の本音を知ってるからだよ。知ってるから言い切れる。
知ってるからココまで来させた。
知ってるから、殺さない。」
言い終わるとマクベスは少女の涙を手で拭い、額にキスをした。
少女はマクベスの唇が触れた部分を手で覆い、赤面した。
「私は・・・もう生きていても辛いだけなんだ。
あんたに私の苦しみが解るわけない・・・。
親に捨てられて、金しか見てない夫婦に育てられて
物心ついた頃から性欲丸出しの下種共に遊ばれて・・・・・・・・。
この先に幸せなんてもの、あるわけ無いでしょ?
だから暗殺者になって、任務の失敗と一緒に消えるつもりだったのに・・・。」
「死ぬつもりなら一人でも死ねたんじゃない?」
「ッ!!!」
少女が怯んだ隙に、マクベスは少女を抱き寄せた。
「一人じゃ淋しいもんな・・・。」
少女はマクベスのその一言で、張り詰めていた糸が切れたかのように泣き崩れた。
マクベスにしがみつき泣き続ける少女の頭を撫でながら、マクベスは優しく話し掛けた。
「ココにいればいい。
・・・・外の世界に嫌気がさしたのなら、ココにいればいい。
君は、自由だ。」
少女の動きが一瞬止まる。
真っ赤な瞳はまだ涙で滲んでいたけど、
マクベスの優しい微笑みをとらえるのには充分すぎるほどだった。
それを見た少女もまた、優しく可愛らしい笑顔を見せた。
「・・・君の名前は?」
少女はマクベスの問い掛けに、少し照れつつ答えた。
「・・・・」
「か。いい名前だね。
よろしく、───────」
冷めたコーヒーの香り薫る、夜明け前。
***fin***
15000HIT特別企画(+20000HIT御礼)、郁奈さんからのリクドリームでした☆★
GBの夢小説を書いたのは初めてだったので、
正直上手くかけるか心配でしたが、
なんとか納得いくものが書けたので♪
ご感想お待ちしておりますvv
→黒蝶
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